「顕彰活動ニュース」

2020.7.3 信濃毎日新聞「斜面」に掲載された記事を紹介します


ジシバリ(地縛り)は茎が地面を覆って広がる雑草だ。タンポポに似た小さな花を咲かせる。
〈強情で大変力のある面白い草ですよ〉。戦前の治安維持法下、逮捕・投獄された諏訪出身の伊藤千代子は親族に宛てた手紙でそう表現した ◆獄窓から外の風景が見えたのだろう。〈生きようとするからこそ、その大事な命をも投げ出すのですね〉。当時非合法だった共産党の活動に入り、 1928(昭和3)年に逮捕された。 拷問に屈せず独房生活にも耐える自分をジシバリに重ね合わせたのか◆翌年夏、千代子は同志だった夫の上申書を検事に見せられる。 同じ刑務所に収監された夫は思想を放棄して転向していた。 千代子の心は揺さぶられた。4通残る手紙の最後の1通には〈理屈がいやになりました〉とある。 やがて精神を病んで入院。肺炎にかかり24歳で亡くなった。 ◆香港の民主化デモの女性リーダー周庭さん(23)ら若者たちも苦悩していることだろう。 中国が「香港国家安全維持法」を施行して弾圧を強めている。周さんらの団体は解散に追い込まれ、 活動を続ける若者たちは次々逮捕されている。見せしめのように ◆「治安維持」も「安全維持」も異論を力で抑える稀代の悪法だ。 「絶望の中にあっても強く生きなければ。生きてさえいれば希望がある」と周さん。日本語に堪能で日本社会に連帯を呼び掛けてきた。 香港に目を注ぎ続けて欲しいとの訴えにどう応えるか。若者たちを見殺しにはできない。

 
命あるものはみんなあらん限りに生きようとしているのですね・・・千代子最後の手紙より